ハービーとの記録をつづる
ハービーは糖尿病なので、1日2回の朝夕の食後にインスリンを注射する必要があった
人生で犬に注射を打つことが起こるなんて、考えたことなかった
むしろ医療用の注射器を実際に手にしたことのある人間なんて、医療関係者以外いないだろう
はじめて注射器を手にしたとき思ったのは、「予想以上に痛そうだな・・・」だった
インスリンを注射する
僕は、ハービーを迎えた初日〜数日間だけ注射を打った
そのときは、緊張で自分の手の震えが止まらず、何度も何度も打つぞ打つぞと心で唱えて、気持ちに助走をつけて打った
針を刺した時に「キャンッ!!」と鳴いて嫌がることもあって、その度にごめんごめんと思った
ハービーの食事が終わる前から、緊張して頭の中が注射のことばかり気になり、
一日中、注射のことを考えるようになっていた
数日後に妻が獣医から指導を受けて、その日から注射を打つのは完全に妻が担当することになった
「ハービーを引き受けるときに、注射の打ち方を習わなかっのか?」と疑問に感じるだろう
前の預かりボランティアさんから引き継ぐときに打ち方は習ったのだが、その方法は微妙に誤っていた(痛みを感じやすい打ち方だった)
では、「獣医から習った妻から習ったらいいのでは?むしろあなたも獣医から習ったら?」と疑問に感じるだろう
獣医からも、妻からも、打ち方を何度か教えてもらったが、注射器を手にすると打てないのだ
情けない話だが、震えながら打ったはじめのころの記憶がトラウマのように蘇り、どうしても打てなくなってしまった
一方、妻の注射スキルはメキメキと成長していった
はじめは肩甲骨の周辺で常に打っていたが慣れてくると
「皮膚が硬くならないように」と、
肩甲骨辺りでも少し右寄り、左寄り、おしりだと右側、左側・・・
ローテーションするように、色々と針を刺す場所まで工夫するようになっていった
(獣医の先生が実際に注射を打つ瞬間の図)
そのとき僕は何をしていたか
僕は注射が打てない
なので、注射時には「ハービーの気をできるだけ注射から逸らす役」に徹する
ハービーは1日のご飯量も決められているので、特別な美味しいおやつを用意して気を引くなんてことができなかった
そのため、決められたご飯から数粒のドライフードを抜き取っておいて、注射する時の気を逸らす用として、手のひらに乗せてハービーの気を引くのだ
「なんだその役回り、必要なのか?」と疑問に感じるだろう
妻の打ちやすいタイミング、打ちやすい位置でハービーが静止するように、
そしてハービーにもできるだけストレスが無いように、
良い感じにハービーの顔の前でフードをチラつかせる
注射が打てない分、全力でやる
「ハービー、ハービー、ハービー、こっちだよ、こっち」
「美味しいのあるよ、ほらこれ、ハービーの美味しいやつだよ、ハービー、ハービー」
フードを手のひらに乗せて、ハービーの顔の前でチラチラと見せる
妻が注射針を打ち込むほんの少し前で、フードが口に入るようなタイミングを狙う
(パクッ!プスッ!みたいなイメージ)
僕の作業を説明して職人感を出そうとしたが、地味過ぎて文章にしても全く見応えが無いし一番大変なのは妻とハービーである
毎日2回も注射をしなければならないのだから、365日×2本=730本も打つことになる
すごい量だ
そして注射器は高い
1本55円する
365日×(55円×2本)
年間4万円にもなる
(使用済みの注射器をトレイに盛り付けてみた図)
ハービーを家族として受け入れたい思いもあるが・・・
預かりボランティアの時は、医療費を保護団体が担ってくれていたから直接の家計への影響は無かった
もし医療費を僕たちのみで賄うとなるとかなり厳しい
元々ハービーの身体を痛めつけた人間である悪いブリーダーを許すことはできないが、ハービーを支えられるほどの資力が無い自分にも腹が立つ
ハービーを家族として迎えて、僕たちだけで幸せにできる力はいま無いのが現実だ
ハービーの預かりボランティアを中止したため、いまは離れているが毎日ハービーの話をしている
何が最善なのか・・・・
どうにか道を探すしかない